はじめに

「AIって、うちのような現場にも本当に関係あるの?」。福祉や介護の仕事をしていると、AIという言葉がどこか遠い世界の話のように感じられることもあるかもしれません。ですが実際には、全国の施設や自治体で、少しずつ、しかし着実にAIの活用が広がり始めています。
この記事では、実際に確認できた施設・自治体でのAI導入事例をまとめ、福祉職の目線からご紹介します。「これなら自分の職場でもできそう」というヒントを、見つけていただけたらうれしいです。
自治体でのAI・ICT活用事例
まず、自治体での取り組みをご紹介します。
青森県大鰐町では、要介護認定に関連する業務について、ローコード開発という手法を使ったデジタル化を進め、業務の効率化に取り組んでいます。埼玉県川口市では、LGWANという行政専用のネットワークに対応したAI-OCR(文字を読み取るAI技術)を導入し、16の課にまたがる入力業務を自動化したという事例が紹介されています。
福島県福島市では、マイナンバーに対応したAI-OCRとRPA(定型作業を自動化する技術)を組み合わせることで、介護保険に関する業務を改善したと報告されています。こうした事例に共通しているのは、AIが職員の代わりに判断をするというよりも、これまで人が手作業で行っていた入力や確認作業を肩代わりしている、という点です。
また、要介護認定の分野では、認定審査にかかる期間が全国的な課題になっています。介護保険法では審査期間を30日以内と定めていますが、令和5年度の全国平均は40.8日に及び、期間内に対応できている自治体は全体の25.1%にとどまるという調査結果が報告されています。こうした状況を背景に、ICT・AIを活用して審査期間を短縮しようとする取り組みが、各地で進められています。
福祉現場向けAIサービスの事例
自治体だけでなく、福祉の現場に特化したAIサービスも登場しています。ある企業が提供する「職員支援AIアプリ」は、生成AIを使って、福祉・子育て・高齢者支援など、多様な面談業務を効率化することを目的としたサービスです。窓口での聞き取り内容の整理などに活用されることが想定されています。
同じ企業からは、介護認定調査業務の効率化を目的とした専用のサービスも提供されています。要介護認定の審査には、訪問による調査という手間のかかる工程が含まれており、こうした業務を支援するサービスが求められている背景がうかがえます。
このように、自治体向けの業務効率化サービスとして、AIを活用した製品やサービスは着実に増えてきています。まだすべての自治体・施設に広がっているわけではありませんが、人手不足という共通の課題を背景に、今後も導入が進んでいく分野だと考えられます。
これから福祉現場で広がりそうな活用の方向性
ここまでご紹介した事例からわかるのは、現時点でのAI活用は、「判断」よりも「作業の効率化」を中心に進んでいるということです。文字の読み取り、定型業務の自動化、面談内容の整理といった、時間のかかる事務作業をAIが肩代わりすることで、職員がより多くの時間を、利用者さんとの関わりに使えるようにする、という方向性が中心になっています。
今後は、こうした業務効率化の動きが、大きな自治体や施設だけでなく、中小規模の事業所にも広がっていくことが期待されます。ただし、AIツールの導入には費用や、職員が使い方に慣れるまでの時間も必要です。無理に一気に導入するのではなく、まずは負担の大きい業務から、少しずつ試していくという姿勢が現実的でしょう。
福祉の現場で働く私たちにとって大切なのは、こうした事例を「自分には関係ない話」と捉えるのではなく、「自分の職場だったら、どの作業から取り入れられそうか」という視点で見てみることです。小さな一歩からでも、AIとの付き合い方を考えていくきっかけになれば幸いです。
よくある質問(Q&A)
Q1.AIの導入は、大きな自治体や施設でないと難しいのでしょうか?
現時点では、規模の大きな自治体での事例が目立ちますが、中小規模の事業所向けのサービスも増えてきています。まずは費用の負担が少ない範囲から、情報収集をしてみることをおすすめします。
Q2.AIは、要介護認定の判定そのものを行うのですか?
いいえ、現状で紹介されている事例の多くは、書類の読み取りや業務の効率化を目的としたものです。認定の最終的な判断は、これまで通り人が行っています。
Q3.福祉現場のAI導入で、まず取り組みやすいのはどんな分野ですか?
文字の読み取りや入力作業といった、時間のかかる事務作業から始める事例が多く見られます。まずは自分の職場で、もっとも負担に感じている作業から検討してみるとよいでしょう。
まとめ

今回は、施設・自治体で広がるAI導入事例について、福祉職の目線からご紹介してきました。すごく簡単にしか説明できなかったため、気になる取り組みがあればもっと深く調べていただけると幸いです。
- 青森県大鰐町、埼玉県川口市、福島県福島市など、自治体でのAI-OCRやローコード開発の事例が広がっていること
- 要介護認定の審査期間の課題を背景に、AI・ICT活用が各地で進められていること
- 福祉現場向けの生成AIサービスも登場しており、面談業務や認定調査業務の効率化に活用され始めていること
- 現時点でのAI活用は「判断」より「作業の効率化」が中心であり、少しずつ現場に取り入れていく姿勢が現実的であること
AIの活用は、まだ始まったばかりの分野です。だからこそ、現場を知る私たちの視点が、これからの活用の広がり方を左右していくはずです。できることから、一緒に取り入れていきましょう。
参考文献・引用元
- NTT東日本「自治体のAI活用事例8選|導入メリットと課題・対策まで解説」https://business.ntt-east.co.jp/content/cloudsolution/municipality/column-49.html
- NTTデータ経営研究所「要介護認定業務におけるICT・AI活用の実証結果と今後の展望」https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/reports/2025/250616/
- NTTデータ関西「自治体の聞き取り調査を効率化するデジタル技術―生活保護・福祉相談の精度向上へ」https://www.nttdata-kansai.co.jp/media/114/



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