AIチャットボットは高齢者向け相談窓口になれる?自治体の実証実験まとめ

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はじめに

「困りごとを相談できる相手がいない」「どこに相談すればいいのかわからない」。こうした声に応えようと、全国の自治体で、AIチャットボットを活用した相談窓口の取り組みが広がっています。福祉の現場で働いていると、こうした新しい取り組みが、実際の相談支援にどう役立つのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、高齢者向けの相談窓口として、AIチャットボットがどこまで活用されているのか、実際の自治体の取り組みをもとにまとめます。


自治体で広がるAIチャットボット相談窓口

いくつかの自治体で、実際にAIチャットボットを活用した相談窓口の取り組みが報告されています。奈良市では、「シニアよりそいAI『AI(あい)ちゃん』」という、高齢者を対象にしたAI相談事業の実証実験が行われ、その結果が市のウェブサイトで報告されています。傾聴型のAI相談として位置づけられている点が特徴です。

千葉県では、生成AIを活用したチャットボット「いつでも福祉相談サポット」を、令和7年2月27日から導入しています。このチャットボットは、24時間365日、インターネット上で利用でき、生活困窮、介護、子育てなど、福祉分野に関するさまざまな相談を受け付け、県や市町村の担当部署や相談支援機関を案内する仕組みになっています。困りごとを抱えた方が「相談することへの心理的負担」や、「適切な相談支援機関につながるまでの労力・時間」を軽減することが、導入の狙いとして紹介されています。

また、株式会社エルブズが提供する高齢者向け対話システム「御用聞きAI」は、京都府南山城村や徳島県三好市、京都府京丹後市などで実証実験が行われ、地域の高齢化問題に対応する取り組みとして紹介されています。AIとの会話を通じて生活支援を行うアプリケーションで、地域情報の提供や、雑談機能などを備えているとされています。


全国的な普及状況と、今後の見通し

自治体全体でのAIチャットボット導入状況について、総務省の調査結果を紹介する記事によると、都道府県レベルではすでに導入済みの割合が高い一方、市区町村レベルでの導入率は9.4%にとどまっているとされています。ただし、実証実験中・導入検討中を含めると、39.5%に達しているとも報告されており、今後さらに普及が進んでいくことが見込まれます。

こうした背景には、労働人口の減少により、自治体が十分な人材を確保しにくくなっているという課題があります。「自治体戦略2040構想研究会」によると、2040年には自治体職員数が現在の半数に減少すると予測されているとされ、人口減少が著しい地方自治体ほど、少子高齢化と福祉の高度化という課題に、限られた職員体制で向き合わなければならない状況にあります。AIチャットボットは、こうした人員面での制約を補う手段の一つとして、期待されているのです。


AIチャットボットにできること、人にしかできないこと

ここまで見てきた事例からわかるのは、AIチャットボットが担っているのは、主に「最初の入り口」としての役割だということです。24時間いつでも相談でき、心理的なハードルを下げ、適切な窓口へとつなぐという機能は、AIチャットボットが得意とする部分です。

一方で、実際の相談支援や、具体的な手続き、深刻な状況への対応は、これまで通り人による専門的な支援が必要です。千葉県の事例でも、AIチャットボットの役割は「相談支援機関に円滑に相談できるようサポートする」ことであり、最終的な相談対応は、県や市町村の担当部署や相談支援機関につなぐ形になっています。

ある自治体でのチャットボット改善の取り組みでは、「回答が専門的でわかりにくい」という声を受けて、専門用語に自動で説明を付ける機能を追加したり、高齢者から「文字が小さくて読みにくい」という声を受けて、文字サイズ変更機能や読み上げ機能を実装したりと、利用者の声をもとに改善を重ねている例も紹介されています。こうした改善の積み重ねが、AIチャットボットを、より使いやすい相談窓口へと育てていく鍵になっているようです。

私も相談を受ける立場として、相手によって持っている知識の差が大きく、説明の仕方に悩んだ経験が何度もあります。制度に詳しい方には要点だけを伝えればよい一方で、初めて相談される方には、言葉の意味から丁寧に説明しないと伝わらないことも多く、同じ内容を説明するにも、相手に合わせて話し方を大きく変える必要がありました。また、そもそも「この相談は、この窓口の担当ではない」というケースもあり、せっかく勇気を出して相談してくださった方に、別の窓口を案内し直さなければならない申し訳なさを感じたこともあります。こうした場面を思い返すと、AIチャットボットのように、まず気軽に話しかけられて、適切な窓口へとつないでくれる入り口があれば、相談する側の負担も、案内する側の負担も、少しは減らせるのではないかと感じています。


よくある質問(Q&A)

Q1.AIチャットボットに相談すれば、専門職への相談は不要になりますか?
いいえ、そうではありません。多くの自治体の取り組みでは、AIチャットボットはあくまで最初の窓口であり、具体的な相談支援は、その先の専門機関につなぐ仕組みになっています。

Q2.高齢者にとって、AIチャットボットは使いにくくないですか?
文字の大きさや読み上げ機能など、高齢者の利用しやすさを考慮した改善が進められている事例もあります。ただし、すべての方にとって使いやすいとは限らず、電話や窓口といった従来の相談方法も、引き続き大切な選択肢です。

Q3.市区町村レベルでのAIチャットボット導入は、どのくらい進んでいますか?
総務省の調査によると、市区町村レベルでの導入率は9.4%にとどまっていますが、実証実験中・検討中を含めると39.5%に達しており、今後の普及が見込まれています。


まとめ

今回は、高齢者向けの相談窓口としてのAIチャットボットについて、自治体の実証実験をもとにまとめてきました。

  • 奈良市「AI(あい)ちゃん」、千葉県「いつでも福祉相談サポット」、株式会社エルブズ「御用聞きAI」など、複数の取り組みが報告されていること
  • 市区町村レベルの導入率は9.4%だが、実証実験・検討中を含め39.5%に達していること
  • AIチャットボットは「相談への入り口」として機能し、具体的な支援は人による専門対応につながれていること
  • 利用者の声をもとに、文字サイズや読み上げ機能など、改善が重ねられていること

AIチャットボットは、相談へのハードルを下げる新しい入り口として、これからさらに広がっていく可能性があります。人による支援とAIの入り口機能、それぞれの役割を理解しながら、現場での活用の可能性を考えていきましょう。


参考文献・引用元

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