はじめに

「個別支援計画やケアプランを作るのに、いつも夜遅くまでかかってしまう」。福祉や介護のお仕事をしていると、こうした悩みを持つ方はとても多いはずです。利用者さんと向き合う時間よりも、書類と向き合う時間の方が長くなってしまうのは、なんだか本末転倒に感じますよね。
この記事では、そんな悩みを持つ福祉職の方に向けて、個別支援計画やケアプランの下書きにAIを使うことができるのか、できるとしたらどこまでなのか、そして気をつけるべき点は何かを、福祉の現場を知る立場からわかりやすく解説します。読み終わるころには、AIとの正しい付き合い方が、きっとイメージできるようになっているはずです。
個別支援計画・ケアプランの下書きに、AIはどこまで使えるの?
結論からお伝えすると、AIは個別支援計画やケアプランの「下書きづくり」には、しっかり役立ちます。具体的には、アセスメントで集めた情報を整理すること、利用者さんの課題や目標を文章として組み立てること、サービス内容の案をたたき台として出すこと、そしてモニタリング記録を読みやすい形に整えることの4つが、AIが得意とする作業だと紹介されています。時間のかかる「文章を書く・整える」という工程を、AIが大きく肩代わりしてくれるということです。
実際に、介護や福祉のDX支援を行う専門家による解説でも、AIができるのはアセスメント情報の整理や、課題・目標の文章化の下書き、サービス内容の原案づくりまでだと整理されています。頭の中にある利用者さんの状況を、AIに向けて言葉で伝えることで、文章としての形にしてもらう、というイメージを持っていただくとわかりやすいでしょう。
また、ケアマネジャーの人手不足はかねてから課題となっており、厚生労働省が運営する職業情報サイトでは、2022年のケアマネジャーの有効求人倍率が4.80倍だったと公表されています。こうした深刻な人手不足の状況もあり、書類作成の負担を減らす手段として、AIの活用に注目が集まっているという背景があります。
AIに任せてよい部分と、任せてはいけない部分の線引き
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。AIは便利な道具ですが、個別支援計画やケアプランの「すべて」を任せてよいわけではありません。
任せてよいのは、あくまで「原案づくり」までです。集めた情報を整理してもらう、文章の言い回しを整えてもらう、いくつかの案を出してもらう、といった使い方であれば、大きな助けになります。一方で、利用者さんの状態をどう見立てるか、どんなニーズを優先するか、最終的にどのプランにするかという判断は、これまで通り専門職が行うべき部分です。ある専門家向けの解説記事でも、AIが作った原案をそのまま使うのではなく、専門職が必ず確認・修正したうえで確定させるという使い方を守ることが大切だと述べられています。
理由は単純で、生成AIは事実と異なる内容や、目の前の利用者さんの実際の状態に合わない提案を出してしまうことがあるからです。AIは、過去の似たような事例をもとに「それらしい」文章を作るのが得意な一方で、その人固有の事情まで正確に汲み取れるとは限りません。ですから、「AIは下書き、決めるのは人」という役割分担を、どんな時も崩さないようにしてください。
使うときに気をつけたいこと(個人情報と最終責任)

個別支援計画やケアプランには、利用者さんの心身の状態や家庭の事情など、とても繊細な情報がたくさん含まれています。この点は、前回の記事でもお伝えした介護記録の場合と同じく、いえそれ以上に気をつける必要があります。
まず大前提として、名前や住所、生年月日といった、誰なのかがわかってしまう情報を、そのまま一般向けのAIサービスに入力するのは避けてください。個人情報保護委員会が公表している注意喚起でも、個人情報を扱う事業者が生成AIにプロンプトとして個人情報を入力する場合には、利用目的に沿った範囲かどうかを十分確認するよう求められています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」、2023年6月2日公表、https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf)。
実務では、「利用者A」「70代男性」のように、仮の名前や一般化した表現に置き換えてから使うことが基本になります。
もう一つ大切なのは、最終的な責任は、AIではなくあなた自身が持つという意識です。AIが出した文章をそのままコピーして提出するのではなく、必ず自分の言葉で読み直し、目の前の利用者さんに合った内容になっているかを確認してください。事業所によっては、外部のAIサービスの利用について独自のルールを定めている場合もありますので、使い始める前に必ず職場に確認するようにしましょう。
実際の使い方の手順
最後に、下書きづくりにAIを取り入れる場合の、基本的な流れをご紹介します。
手順1:情報を整理する。 アセスメントで集めた情報のうち、名前などの個人が特定される部分を除いて、「70代女性、要介護2、歩行に不安あり」のように整理します。
手順2:AIに伝える。 整理した情報をもとに、「この方の課題と目標の案を、丁寧な言葉でいくつか提案してください」のように、具体的にお願いします。
手順3:出てきた案を見比べる。 AIが出してきた複数の案を見ながら、自分が普段の面談やアセスメントで感じていたことと照らし合わせます。
手順4:自分の判断で仕上げる。 良いと思った表現は取り入れつつ、最終的な内容は必ず自分の専門的な判断で決め、正式な様式に落とし込みます。
手順5:関係者に確認してもらう。 完成した内容は、これまで通り利用者さんやご家族、関係する事業所に確認してもらい、同意を得たうえで正式なものとします。
この流れを守っていただければ、AIは決して「危ない道具」ではなく、あなたの仕事を後ろから支えてくれる、心強い存在になるはずです。
よくある質問(Q&A)
Q1.AIに個別支援計画やケアプランを、全部おまかせできますか?
いいえ、それはできません。AIが担えるのは、情報の整理や文章の下書き、原案づくりまでです。利用者さんの状態の見立てや、プランの最終的な決定、ご本人やご家族への説明と同意は、これまで通り専門職の役割として残ります。
Q2.利用者さんの情報を、AIに入力しても問題ないですか?
名前や住所など、個人が特定できる情報をそのまま入力するのは避けてください。仮の名前や年代・状態だけの表現に置き換えることが基本です。あわせて、勤務先で決められている利用ルールも必ず確認しましょう。
Q3.AIを使うと、専門職としてのスキルが落ちてしまいませんか?
使い方次第です。AIに考えることをすべて任せてしまうと、その心配はあるかもしれません。ですが、「AIは下書き、決めるのは自分」という姿勢を保ち、最終判断を必ず自分で行うようにすれば、むしろ空いた時間を利用者さんとの対話に使えるようになり、専門職としての力を発揮しやすくなるはずです。
まとめ
今回は、個別支援計画・ケアプランの下書きにAIを使えるのかどうか、その活用できる範囲と注意点についてお伝えしてきました。
- AIが得意なのは、情報の整理や文章の下書き、原案づくりまでであること
- 利用者さんの見立てやプランの最終決定は、これまで通り専門職の役割であること
- 個人情報は仮名化・一般化してから入力し、職場のルールも必ず確認すること
- 「AIは下書き、決めるのは自分」という姿勢を忘れないこと
書類作成に追われる時間が減れば、その分だけ利用者さんと向き合う時間が増えます。AIを正しく味方につけて、あなたらしい支援に、もっと時間を使っていただけたらうれしいです。今日からできることとして、まずは一件、簡単な情報整理から試してみてくださいね。
参考文献・引用元
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf
- ノーコードでソウゾウメディア「ケアプランをAIで作成|できること・使い方とケアマネの役割【2026】」https://media.souzoh-official.com/kaigo-careplan-ai/
- LinkJapan BLOG「AIでケアプランが作成できる?推進される背景から実装への課題まで詳しく解説」https://linkjapan.co.jp/blog/ai-care-plans



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