はじめに

「支援記録を書くたびに、同じような表現ばかりになってしまう」「利用者さんの変化を、もっと的確な言葉で残したいのに時間が足りない」。障害福祉サービスの現場で働いていると、こうしたもどかしさを感じることがあるのではないでしょうか。
この記事では、障害福祉サービスにおける支援記録の作成に、ChatGPTをどのように活用できるのかを、個別支援計画への応用も含めてお伝えします。日々の記録業務を、少しでも軽くするヒントにしていただけたらうれしいです。
障害福祉の支援記録にChatGPTが向いている理由
障害福祉サービスの支援記録には、日々の活動記録、支援経過記録、モニタリング記録など、さまざまな種類があります。共通しているのは、「利用者さんの様子」という事実を、決まった形式の文章に落とし込む作業だという点です。この「事実を文章に落とし込む」という作業こそ、ChatGPTが力を発揮しやすい部分です。
たとえば「午前中の活動プログラムに参加。集団での作業に対し、以前より積極的に声をかける様子が見られた」というように、出来事と気づきを短く伝えるだけで、支援記録として使える形に整えてくれます。特に、障害福祉サービスでは、利用者さんの小さな変化を丁寧に言葉にすることが、支援の質を左右する大切な部分です。ChatGPTに下書きを手伝ってもらうことで、「文章を組み立てる負担」を減らしながら、「どんな変化に気づいたか」という、本来もっとも大切にすべき部分に頭を使う時間を増やすことができます。
また、複数の職員が関わる事業所では、記録の書き方に個人差が出やすいという課題もあります。ChatGPTに「この事業所の記録の型」を伝えておくことで、職員間の記録の質を一定に近づけるという使い方も考えられます。
個別支援計画への応用と、その限界
支援記録だけでなく、個別支援計画の下書きにもChatGPTを活用できます。障害福祉サービスの個別支援計画は、サービス管理責任者や相談支援専門員が、アセスメントの内容をもとに、利用者さんの課題や目標、支援内容を整理して作成するものです。この「整理して文章にする」という工程を、ChatGPTに手伝ってもらうことができます。
ただし、ここには明確な限界があります。個別支援計画は、利用者さんやご家族の意向を踏まえながら、専門的な視点で目標や支援内容を決定していく、非常に重要な文書です。ChatGPTが出してくる文章は、あくまで「それらしい」案であり、目の前の利用者さんの状況を正確に反映しているとは限りません。AIは下書きの作成まで、最終的な決定と責任は専門職が持つ、という役割分担を、障害福祉の現場でも変わらず守る必要があります。
特に障害福祉の分野では、身体・知的・精神といった障害特性によって、配慮すべきポイントが大きく異なります。この個別性の高さを踏まえた判断は、資格と経験を持つ専門職にしかできないことを、あらためて意識しておいてください。
使うときの注意点と、実践のコツ

支援記録や個別支援計画にChatGPTを使う際は、これまでの記事と同様に、個人情報の取り扱いに十分注意する必要があります。利用者さんの氏名や、障害の内容がわかってしまうような具体的な情報を、そのまま一般向けの生成AIに入力するのは避けてください。個人情報保護委員会の注意喚起でも、個人情報を扱う事業者が生成AIにプロンプトとして個人情報を入力する場合には、利用目的にあった範囲かどうかを十分に確認するよう求められています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」、2023年6月2日公表、https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf)。実務では「利用者B」「20代・知的障害」のように、一般化した表現に置き換えてから使うことが基本です。
実践のコツとしては、まず自分が普段よく使う言い回しや、事業所の記録フォーマットをChatGPTに伝えておくことです。一度「型」を教えておけば、その後は同じ形式で下書きを作ってもらえるため、毎回イチから指示を出す手間が省けます。また、複数の案を出してもらい、その中から自分の感覚に一番近いものを選んで手直しする、という使い方も効率的です。
最終的にできあがった文章は、必ず自分の目で読み直し、事実と違う点がないか、利用者さんへの敬意が感じられる表現になっているかを確認してから、正式な記録として残すようにしてください。
私も同業の知人から聞いた話ですが、複数の職員が関わる事業所で、支援記録の書き方に大きなばらつきがあり、困っていたことがあったそうです。ベテラン職員は簡潔に要点だけをまとめる一方、経験の浅い職員は何を書けばいいかわからず、同じ出来事でも記録の厚みがまったく違ってしまう。会議でその記録を読み上げても、利用者さんの様子が正しく伝わらず、申し送りのたびに聞き直しが発生していたといいます。その知人は、「ベテランの頭の中にある『書き方の型』を、もっと早くみんなで共有できていれば」と話していました。個人の経験に頼るしかなかった記録の質を、どうやって事業所全体で底上げできるか。ChatGPTに「型」を教えて下書きを作らせるという発想は、まさにこうした現場の悩みから生まれてきたものなのだと感じます。
よくある質問(Q&A)
Q1.障害の特性に関する記述も、ChatGPTに書いてもらえますか?
一般的な言い回しの下書きとしては可能ですが、その利用者さんに合った正確な特性理解や配慮の記述は、専門職の判断が欠かせません。ChatGPTが出した文章は、必ず自分の知識と照らし合わせて修正してください。
Q2.サービス管理責任者や相談支援専門員でなくても、この使い方はできますか?
はい、支援記録の下書き作成という範囲であれば、資格の有無にかかわらず活用できます。ただし、個別支援計画そのものの最終決定は、資格を持つ担当者の役割であることに変わりはありません。
Q3.事業所によって記録の書き方が違う場合、どう対応すればいいですか?
ChatGPTに、あらかじめ自分の事業所で使っている記録の型や、よく使う言い回しを伝えておくと、事業所の雰囲気に合った下書きを作ってもらいやすくなります。
まとめ
今回は、障害福祉サービスの支援記録と個別支援計画へのChatGPT活用についてお伝えしてきました。
- 支援記録は「事実を文章に落とし込む」作業のため、ChatGPTとの相性が良いこと
- 個別支援計画の下書きにも活用できるが、最終決定は専門職が担うべきこと
- 障害特性への配慮など、個別性の高い判断はAIだけに頼れないこと
- 個人情報は一般化した表現に置き換え、最後は必ず自分の目で確認すること
日々の記録業務が軽くなれば、その分、利用者さんの小さな変化に気づく余裕が生まれます。ChatGPTを上手な相棒として、これからの支援に役立てていってくださいね。
参考文献・引用元
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf



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